自分でできる疾病対策
疾病対策膝編初歩
日本人の女性が50代頃から訴える膝の痛みは、「変形性膝関節症」によるものが多く、この症状は「正座」などの生活習慣が大きく影響しているとされます。その証拠に、この症状がでる欧米人は日本人比べはるかに少ないのです。
ですから、整形外科にしろ鍼灸治療にしろ治療によって痛みが軽減した後は生活をイスを中心にした生活に移行させることが大切です。しかし、長年の習慣や家具などをいきなり変えるには時間もエネルギーも必要でなかなか踏み切れるものではありません。
そこで、まずは「正座椅子」を使うことをお勧めいたします。正座で膝に体重がかかる事を軽減し、膝を深く曲げ過ぎずにすむのでただ、正座をするよりも遥かに膝への負担は軽くなります。
私の母も膝がギシギシする、油切れしたようだと訴え始めた直後にこれを使うことによって洗濯物を畳むことができました。(現在はソファーで洗濯物を畳むようにしてもらっています。)
時代劇の役者さんがこれを使っている事はよく知られており、最近ではホームセンターやインターネットで簡単に手に入ります。「水戸黄門」や「鬼平犯科帳」を見ながら「副将軍も鬼平もこれを使っている」と考えるとつい笑いがこみあげてきます。
私の「正座椅子」は、師匠が巣鴨で開業しているので買い物ついでに探し回って手に入れました。巣鴨の通りはこのような商品が本当に豊富で見ているだけで楽しくなります。(美味しい甘味処も多くつい買い食いしてしまいます)
膝の痛みは毎日の事で、しかも正座するたびに悪影響があるのですから、まずは日常生活に手軽に溶け込める正座椅子から始めましょう。
疾病別の体操指導
『骨盤牽引』の代わりになる体操①

『ぶら下がり法』
1, 腰の力を抜いて何かにぶら下がってください(私は鴨居を使っています。)
2, 足を身体より前方に出し、地面についても構いません。だから、低い所につかまっても出来ます。
3, お腹を多少ひっこめて下さい。
4, 重さが足りないと感じれば誰かにあなたの腰にぶら下がってもらってください。
5, 1回20~30秒・2~3回だけで『骨盤牽引』と同じ効果があると思われます。
◎腰より下の重さは体重の約40%と言われます。これに、5~6歳の子供(体重約20kg)にぶら下がってもらえば十分なけん引力になります。
『全骨盤牽引』の代わりになる体操②
1, 腰をほぼ直角に曲げて、腕を伸ばして出来るだけ離れて何かにつかまります。
2, 腰を右回りに円を描くように大きく動かします。「右⇒後⇒左⇒前」と頭の中で唱えながらやるとメリハリが付きます。
※写真では左からまわし始めていますが逆回転もやるのでどちらからでも構いません。
3, 後ろにひいて
4, 右に行ったら前に(写真では右は飛ばしています。)
5, 次は、逆回し、左回りに円を描きます。左⇒後⇒右⇒前と唱えます。
◎この方法でも背骨は伸ばされ、また椎間関節にも動きが出てきます。
ただし、早く回すのではなく、体のどこが伸びているのか感じながら大きく、ゆっくり、回すことが大切です。
コラム
日本人の「正座」は文化ですが、実は日常的に行うようになったのは江戸時代以降です。戦国時代までは武士はあぐらで座るのが作法で、女性や茶人もあぐらや立膝だったそうです。正座は神仏を拝んだりするときや将軍に拝謁するときなどに取る姿勢特別な姿勢だったのです。
実際、雛人形のお内裏様も胡坐をかいていますね。(お雛様は服で隠れて見えませんが)また、当時の武士の肖像画を見ると、立膝か低い椅子のようなものに腰掛けていたりします。(徳川家康の怒ってる肖像画などを見ると分ります。)
変わり始めたのは、三代将軍徳川家光のころで、江戸城に全国から集まった大名の順番を畳一畳ごとに定めて序列を示し、全員が将軍に向かって正座するシステムを作り、これが地元に帰った大名を通じて武士や庶民にも伝わったそうです。
またこの時代に畳敷きの家が普及し始めたことも正座文化を後押ししたそうです。これを考えるとフローリングに正座は向かないことになりますね。
参考文献
朝日新聞「正座が礼儀いつから?」 2006年8月4日